「ぷしっ!」「ぷしっ!」と耳慣れぬ音が聞こえる。音の出どころに目を向けると思いのほか地すぐそばにいてびっくりした。
彼の名は「無職」
うちで飼っている花さんと毛並みが同じなのでおそらく兄妹なのだが、コソコソとご飯を食べにやってくる姿が、金を無心しにくるダメ兄貴のような風体だったので無職と名付けた。
この辺の猫たちは割と人馴れしているのに無職だけは手を差し出すと「シャー」と引っ掻く筋金入りの野良猫だ。
気づいたらうちに上がりこんでいるのはままあるのだが、どうやら今日はちょっと様子が違う、何が違うのだろう?とよくよく見ると漫画のようによだれをダラーと垂らしているではないか!
なるほど先ほどの奇妙な音はくしゃみだったのかと理解したが、それ以外にも何かが違う。甘えたそうにこっちを見ているのだ。
無職とはかれこれ3年の付き合いになるが今まで触れたことがない。
今日ならいける!と確信して手を差し出すと。。。。
ひっかかれた。
まあそんなもんだよなあと思いつつ、ご飯をあげるといつもなら僕の姿が見えなくなるまで食べないのだけど、今日はすぐに食べはじめた。よっぽどお腹が減っていたんだろうと思ったけど、やはり今日は隙が多いというか警戒レベルが明らかに低い。
再度触ろうと試みると今度は難なく触れた!
出会ってから3年初めて触ることができた!
この喜びを何に例えればいいのだろう?
101回目のプロポーズ並みに諦めずに何度もなんどもアプローチし続けやっと思いが届いたような気持ちでさわさわさわ。さわさわさわ。さわさわさわ。繰り返し触り続けた。
しかし驚くべきはその細さだった。
触られる心地よさに安心したのか香箱座りでくつろぐ無職。
この後アオサが帰ってきていつもなら「この泥棒猫!」と言わんばかりに追いかけ回し追い出すのですが今日に限っては、我関せず。。。
夏風邪をひいてる無職を哀れんでいるのだろうか?
こっちが寝ていようが御構い無しに「ニャー」と鳴けばご飯が出てくる生活をするアオサと人になつく事ができない不器用な無職。
相入れぬ二匹が病気をきっかけに受け入れる事ができたのかもしれない。
猫にも慈悲の心があるのかと思うとちょと泣ける。