50年以上行列店を維持し成長を続けるラーメン二郎

ラーメン二郎

全国に1万8000店ものラーメン店がある中、常に異彩を放ち50年以上行列店として君臨し続けるラーメン二郎。インスパイア系と呼ばれるラーメン二郎を模した店舗も増え、多くのジロリアンを輩出しています。

何故これほどまでにラーメン二郎は愛されるのか?そして、成長し続けるのか?その秘密を50年前からの歴史を紐解きラーメン二郎のレシピにたどり着きました。

ネットを探せばラーメン二郎のレシピは点在しています。しかし手前味噌であるがこれほど核心に近づいたレシピはないと自負しています。ラーメン二郎の歴史。その始まりは「売れない」事でした。

創業は1968年(昭和43年)で、東京都目黒区の都立大学駅近くに当初「ラーメン次郎」の名前で開店した。 これは開店前年の1967年1月にエースコックから発売されて人気となっていたインスタントラーメン、「ラーメン太郎」を捩ったものとされています。

ラーメン次郎?二郎じゃあないの?と驚かれるもしれないけど、本来はラーメン次郎だったが新店舗(現在の三田本店)の看板をペンキ屋が間違えて「二郎」と描いてしまった事から現在の形になったと言われています。創業者山田拓海氏のおおらかな性格がうかがえるエピソードですね。

店主の山田氏は和食料理人で、ラーメンについては全く知識がなかったそうです。

最初は「ラーメンぐらい何とかなるか」とたかをくくってラーメン店を出店したが、開店当初から半年間は1日あたりの売上が昼前から深夜まで営業しても20杯以下と低迷していました。

様子を見かねた近所の中華料理店店主が自分の中華料理店で修業するようにすすめ、山田はその勧めに応じて3か月間の修行をし、近隣にあった学生寮に住んでいた北海道出身の客から受けた助言を参考にし、独自の味を作り出したそうです。提供するラーメンのボリュームと味付け、山田の人柄が学生に受けたことから店は繁盛しました。

ボリュームがあると行っても現在ほどのボリュームではなく、今見ると普通よりちょっと多いくらいでさほどボリューム感はありません。しかし驚くべきはその価格。ラーメンをわずか300円で販売していました。

30年前の物価は決して安くはありません。何故ならバブル絶頂期といわれる1990年代に同額で販売していたのです。過去の映像としてyoutubeにテレビ取材が入った時の映像が残っていたので見ていただきたい。

故・逸見政孝氏がインタビューしているが、美味しいとは一言も言わず「若い人向け」とこってりが苦手な様を真っ正直に語っているのがなんとも清々しい。

メニューを絞り回転率を上げる

ラーメン二郎30年前のメニュー

話は脱線しましたが、メニューは

ただのラーメン300円

大盛りラーメン330円

ブタ入りラーメン350円

大盛りブタ入りラーメン380円

この4種類のみ!!
そして激安!!

客単価を上げるため、ご飯を始めミニ丼や、餃子などメニューを増やす店が多い中、様変わりした現在のラーメン二郎もライスすらなく大盛り・チャーシュー。ブタWと構成は同じです。

ラーメン店のネックとも言えるのが餃子の存在です。業務用の焼き台はスペースを取る割りに1台1〜2人前しか作れずラーメンの完成にタイミングを合わせなければならず、手間もコストもスペースも取ります。これを切り捨てたおかげで行列店となったのが、ラーメン二郎、そして家系ラーメンです。

激安を実現した徹底したコスト管理

いくら薄利多売といってもこの価格で一体いくらの儲けが出るのだろうか?単純原価(光熱費・人件費は含めないぜ医療費のみの原価)で30%としても原価100円。儲けは200円。一般的にはこのような試算になるけど、時代と材料を鑑みるとおそらく50円を切る価格だったと思われます。

まずはメインの材料である豚骨と背脂。現在のように豚骨が主流ではなかったラーメン業界で豚骨は肉屋さんからただ同然で貰えるものでした。肉屋さんとしては処分費がかからず引き取ってくれるのでwinwinの関係です。

そしてキャベツ。農協の審査基準から外れたキャベツは畑の肥やしとして廃棄されるため、知り合いの農家がいればこれもただ同然で手に入る食材です。東京でキャベツ?と思われるかもしれないが、23区のキャベツは1700以上の市町村の中で41位に入る生産高を誇るんです。

そして麺。日清から販売されているオーションは、現在は小麦の味が濃い良い強力粉として認識されているが、そもそもは製粉度の低い安価な小麦で非常に安い。現在でも業務用25kg単位であればアマゾンで4000円程度で手に入る安さだ。

ラーメンの常識を捨てた英断

過去のグルメレポート動画で逸見政孝氏が見せた怪訝な表情で好みではない事をあらわにしていたが、当時のラーメンといえばあっさり醤油。いわゆる東京ラーメンが主流だった。醤油香る澄んだスープに海苔・焼豚・シナチク・ゆで卵にほうれん草、そして小口ネギが浮かぶ・・・。それがラーメンの王道でした。

これらの具材の中でコストパフォーマンスが著しく悪い食材があります。

それはネギです。

ネギは通年手に入るが、価格変動が激しく季節・豊作・不作によっては2倍以上に跳ね上がる月もある。価格の安定しない食材は非常に厄介で、価格に合わせて量を調整すれば味は変わるし、量に合わせれば原価が上がる。

そのため、ラーメン二郎ではネギが入っていない。

その代わり通年変わらない価格で手に入るもやしをメインの具材にしたのはこうした経緯だと思われます。

お客の教育と徹底したロットの概念

ジロリアンの間で言われる「ロットを乱さない」というルール。二郎の麺は他のラーメンに比べてかなり太く、麺量も多いことから茹で時間が長くなってしまうので、大鍋で数人分まとめて茹でる必要があります。

だいたい席数の半分5〜8人分のラーメンが一度に完成するように茹でていて。その際の、一度に処理するお客さんの人数が「ロット」と呼ばれています。

常に行列が絶えないお店のため回転数を上げるため、先に注文を聞き、お客の退店と次のお客さんが入るのを見越して調理を始めるため、約15分以内に食べないと次のお客さんを入れらないため、早く食べられないと「ロット乱し」と非難されることになります。

こうした事から二郎は初見は怖いという印象だが、お客さんが次のお客さんのために協力していると考えるとなんとも微笑ましい。

動画内では解説がなかったので補足すると、スープとタレの配合割合は
スープ340ccタレ60ccです。通常のラーメンは塩分濃度が計算しやすいよう、スープ:タレが9:1になるように作りますが、これでは醤油の風味が強さが再現できなかったためたどり着いた比率です。

ラーメン二郎の塩分濃度は高く1.9%〜2%ほどと感じていましたが、この配合により塩で塩分濃度を調整せず近い味わいを再現する事に成功しました。

ラーメン二郎 スープの材料

背ガラ 2kg
豚肩肉 500g
豚もも肉500g
背脂  1KG
ニンニク 1個
水    5ℓ

ラーメン二郎 カネシ(醤油だれ)の材料

カネシ(スープ340cc タレ60ccで配合)
ヒゲタ醤油   300cc
ほんてり    50cc
砂糖      20g
グルエース   20g

ラーメン二郎 麺の材料

オーション 300g
塩・かんすい  3g
水 96cc
サラダ油 15cc
麺切りはアトラス150の5番と3.5mmの替刃を使用

ラーメン二郎スープ作り解説

ラーメン二郎のスープは乳化系と非乳化系の2種類があるけど今回は乳化系を作りました。

ラーメン二郎のスープは他の豚骨を主体としたラーメンに比べると豚骨の量が少なく、おそらく半分以下でしょう。しかし他の豚骨ラーメンと比べてもこってりしているのは、背脂、そしてチャーシューにあります。ラーメン二郎の醍醐味でもある大判のチャーシューは、スープの出汁となっているのです。そもそも豚骨自体には味はなく、骨髄から出る旨味の成分はコラーゲン。これ自体は無味無臭で味に影響しているのはスープ粘度です。では味は何か?というと骨に媚び立たい肉や油。これがスープの香り、味となっています。

こってりと感じるのはスープのとろみと、分子クラスターの大きい油です。背脂から抽出された油がラーメン二郎のメインの味わいとなり、チャーシューが出汁としてスープのインパクトを与えています。

このようにチャーシューが出汁となり、具材となっているのです。出汁と具材と無駄なくチャーシューを使い切っています。

吉村家直系ラーメンはチャーシューとスープは別に作っている

吉村家中チャー玉子麺固め

余談ですが、吉村家直系店は逆にチャーシューをスープの出汁とせず、スープとは別に作っています。

スープを継ぎ足しながら、スープの濃度を上げていくのが家系スタイルのため、チャーシューをスープに入れてしまうと味にムラができてしまうため入れていません。例外的に厚木家ではスープに濃厚な味を与えやすいバラ肉をしようし、厚切りチャーシューを普通のチャーシューとは別に入れていましたが、豚肉の高騰に伴い現在はその方法は取られていません。

このように濃厚豚骨を売りにしているお店でも作り方には大きな違いがあります。ラーメンって奥が深いですね。

こだわりを捨て美味いに特化したラーメン二郎の(カネシ)醤油だれ

ラーメン二郎カネシの作り方

カネシとは醤油だれの名称ではなく、ラーメン二郎に醤油だれを卸していた商社の名前に由来します。次郎マニアによってタレの材料について様々なものが明らかかになっています。代表的なものがグルエースを呼ばれる化学調味料です。

以前は丼に直接グルエースを打ち込む姿が見られましたが今はタレに混ぜているようですね。化学調味料を使わないというこだわりを見せる店が多い中、美味ければなんでも使うという姿は潔いですね。

化学調味料を否定する人が増えたためやたらに無添加、化学調味料不使用をうたう製品が増えていますが、アミノ酸発酵食品と置き換えただけで実際に使っているものは同じです。

タレはこだわるほどコストのかかるノノです。1杯300円でラーメンを作っていた時代。このグルエースなしでは味を作ることはできません。

タレを作る直前に一度ラーメン二郎を食べに行き再確認してきました。タレの特徴を挙げると

  • 醤油の風味が強い
  • 甘みも強く舌に残る
  • しょっぱい

ラーメン二郎カネシの作り方

この3点を鑑みて醤油そのものの味を確かめてみました。ラーメン二郎はコストを重要視しているため、大手メーカーの一番安く手に入る醤油を比較し味を比べてみました

キッコーマン本醸造

香り高くキレのある味。醤油の風味は薄く煮物・刺身など和食に合う味

ヤマサ本醸造

香りはキッコーマンの方が上だが、醤油のコクが強い

ワダカン本醸造

4種の醤油の中で一番安い醤油。故に味も香りも一段劣る

ヒゲタ醤油

味・香りともキッコーマンとヤマサのいいところドリをした味

味比べの結果、ヒゲタ醤油を採用しました。ちなみに家系はヤマサが主流のようです。
ヤマサ醤油 吉村家監修醤油とんこつ鍋つゆ 750g

このような商品がヤマサから販売されていました。

ラーメン二郎の醤油風味の強さですが、これはシンプルに醤油ダレの量によるものだと判断し、スープとタレの比率を変えました。通常ラーメンはスープとタレの比率を9:1にすることが多いです。これは塩分濃度の計算が楽だということが影響しているのでしょう。そのためスープ270ccタレ30cc合わせて300ccのスープを提供している店が多いのですが、ラーメン二郎のスープは明らかにそれよりも多いです。

しょっぱいと感覚的な事を書きましたが、ラーメン二郎の塩分濃度は1.9〜2.0%とかなりしょっぱめです。醤油だれは基本醤油の塩分濃度を基準にしているところが多く、スープ類としてはかなり塩分濃度が高く、1.5〜1.7%が主流です。醤油以外に加えた材料を醤油に近い塩分濃度にするため塩を加えているのですが、レシピに書いた文量だと、レードル2杯分60ccの醤油だれと340cc合わせて400ccのスープにすると塩分濃度は1.9%となり醤油の風味が強い味に仕上がりました。

ラーメンタレとしては非常にシンプルなタレですが、背脂・野菜との相性が役こだわり過ぎずとも美味しいラーメンが作れるという好例です。醤油tお味の素だけで味付けした野菜炒めがバカウマなようにシンプルこそ王道と言えるかもしれません。

ラーメン二郎の味を支える自家製麺

ラーメン二郎湘南藤沢店

私の住まいから最寄りのラーメン二郎はスモジか藤沢なのですが、藤沢店に行った際大量のおーションが積まれていたことに驚きました。

多店舗となった今でもお店が独自で自家製麺を打っているのです。大変かもしれませんが、この自家製麺のコストは半端なく安いのです。

一般的にラーメン店に卸される麺の価格は40〜80円前後。二郎は人玉あたりの量が多いので、おそらく60円前後となるでしょう。しかしオーションを使った自家製麺だと20円前後となります。この安さこそがヤサイマシマシニンニクアブラカラメという無茶な注文にも耐えうるのです。

ラーメン二郎の原価はいくら?

ラーメン二郎をゼロから作ってみてわかったのは物凄い安いという点です。大量仕入れを加味せずにもやし一袋19円と一般流通価格で計算したとしてもラーメン二郎1杯あたりの原価は・・・

93円!!!

100円を切る価格です。この安さがあるからこそヤサイマシなど特殊なオーダーにも耐えうるのです。

二郎インスパイア系は数あるけれど、ヤサイマシマシなどの注文は対応していないところが多いのはズバリラーメン二郎よりこだわっちゃってるから原価を落とせていないのが原因だと思われます。

海苔・メンマ・ほうれん草・ネギと細々した具材で原価も10〜20円程度のものですが、こうした食材を削いで、食材を絞り込みメイン食材の量を増やす事で、顧客満足度と仕入れコストを下げるというふたつのメリットを満たしています。

昭和43年学生街で生まれたラーメン二郎は学生を相手に商売をしたが故にラーメンに求められる本質を知ったのではないでしょうか

ラーメンに求められるもの。それは

安くてお腹いっぱいになる!

これに尽きると思います。大勝軒の故・山岸一雄氏が「量も味」という名言を残しています。お腹を満たす量を提供する事に振り切った結果ラーメンではなく二郎という食べ物と評される独自性を生み出したと言えるでしょう。

YouTubeではラーメンレシピを始め、ダイエットレシピなど公開しています。
ちゃんねる登録よろしくお願いします

 

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で